京都・東山。
ねねの道や二年坂、八坂の塔といった観光名所のすぐそばにありながら、一歩足を踏み入れるとひっそりとした空気に包まれる坂道があります。
その名は「龍馬坂」。
坂本龍馬と中岡慎太郎の墓がある霊山護国神社へと続くこの道は、幕末ファンなら必ず一度は歩いてみたいルートです。
石畳の坂を登りながら、私は「龍馬もこの道を通って霊山に眠ることになったのか」と思いを馳せました。
龍馬坂の入口 ― 観光地から静寂へ
訪れたのは晴れた日の午後。清水寺や高台寺から歩いて数分の場所に龍馬坂の入口があります。
観光客でにぎわう道を外れ、細い石畳の坂に足を踏み入れると、途端に人通りが少なくなり、空気が変わります。
坂の両側には民家や古い町家が並び、植木鉢の緑が彩りを添えています。
石畳はところどころ苔むし、歴史を感じさせる風情。京都の中心部にありながら、まるで時代を遡ったかのような感覚に包まれました。
途中には「龍馬坂」と刻まれた小さな標柱もあり、ここが史跡であることを静かに伝えてくれます。
観光マップには大きく載らない場所ですが、歴史を知る人にとってはまさに“聖地への道”なのです。

石段を登りながら感じる「時間の重み」
龍馬坂は緩やかな上り坂から始まり、やがて石段となって霊山へと続きます。
段差は決して高くありませんが、じわじわと体力を奪われます。
一段ごとに足を踏み出すたび、幕末の志士たちの足音が重なって聞こえてくるようでした。
この道を登った人々は、どんな思いを抱いていたのでしょうか。
慶応3年11月、龍馬が近江屋で斬られた後、多くの同志たちが弔問に訪れました。
その後、遺骸が霊山に葬られる際、この坂を通った人々の悲しみを想像すると胸が締めつけられます。
私は立ち止まって深呼吸をしました。
木々の間から差し込む光と、石段に落ちる影。
都会の喧騒からほんの数分しか離れていないのに、ここには「静かな幕末」が確かに残っていました。
龍馬坂の歴史的背景
龍馬坂という名前は、霊山護国神社に眠る坂本龍馬・中岡慎太郎の墓へと続く道であることから名付けられました。
幕末に活躍した志士たちの多くは、この東山の地に眠っています。
明治維新後、志士たちを祀るために霊山護国神社が創建され、その参道となったこの坂が「龍馬坂」と呼ばれるようになったのです。
つまりこの道は、単なる生活道路や観光ルートではなく、「志士たちの魂へと続く参道」。
歴史と信仰、そして人々の敬慕の思いが重なり合った坂道なのです。
途中で出会った小さな祠と町並み
石段を登る途中、小さな祠や地蔵堂が目に入りました。
地元の人々によって大切に守られているのでしょう。
お供えの花があり、地域の暮らしの一部としてこの坂が息づいていることを実感します。
また、途中から振り返ると、京都市街の景色が一望できました。
近代的なビル群の向こうに広がる山並み。
そのコントラストに、過去と現在が交差する京都ならではの魅力を感じました。
龍馬たちの墓に向かって続く石段は物言わぬ思いメッセージを感じさせるに十分な雰囲気が出ています。
この風景だけでも「龍馬坂」を訪れる価値があります。

霊山護国神社へ ― 龍馬の墓へ至る道
坂を登りきると、霊山護国神社の鳥居が見えてきます。
龍馬と慎太郎の墓が待つあの場所へ。
龍馬坂は、まさにその「入口」なのです。
歴史を知らなければ通り過ぎてしまうかもしれません。
けれども知って歩けば、ただの石段が「歴史を歩く道」へと変わります。
私は改めて、旅の中でこうした“小さな道”を歩くことの大切さを実感しました。
華やかな史跡や大きな建物だけではなく、そこへ至る小径や坂道にこそ、歴史の余韻が息づいているのです。
現地で感じたこと ― 「志士の足音」
龍馬坂を歩きながら、ふと耳を澄ますと、石段を駆け上がる草履の音が聞こえる気がしました。
それは龍馬だったのか、慎太郎だったのか、あるいは高杉や久坂だったのか。
幕末の志士たちが見た景色と同じ空を見上げ、同じ坂を登る。
その体験こそが「史跡巡り」の醍醐味です。
私は最後に坂の中ほどで振り返り、下から差し込む陽光と、石段に残る長い影を目に焼き付けました。
そして胸の中で「龍馬さん、また来ます」と呟きました。
📍 アクセス
- 所在地:京都府京都市東山区清閑寺霊山町
- アクセス:京阪祇園四条駅より徒歩20分/清水寺から徒歩10分
- 目印:霊山護国神社参道、石畳と石段
まとめ
「龍馬を巡る旅 第10弾」として歩いた龍馬坂。
それはただの坂道ではなく、志士たちの魂へと続く参道でした。
観光の喧騒からわずかに外れるだけで、幕末の静けさと重みを感じられるこの坂。
龍馬や慎太郎が眠る霊山護国神社を訪れる前に、ぜひ一度この道を歩いてみてほしいと思います。
石段を登り、歴史の余韻を感じながら手を合わせるとき――。
あなたもきっと、幕末という時代が“今も生きている”ことを実感できるはずです。
龍馬を巡る旅は、まだまだ続きます。
次回予告
次回は「龍馬を巡る旅 第11弾」として、池田屋騒動の現代に残る痕跡――擬宝珠刀傷跡を訪ねます。
Instagram連動
今回の訪問記録はInstagramにも投稿しています📷
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